競技用ボールなどのメーカー、モルテンは、空気入れが不要な世界初の組み立て式サッカーボールを開発し、発展途上国の子供たちの成長に貢献する事業に取り組んでいる。
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Molten's MY FOOTBALL KIT, is a soccer ball that can be assembled with no need for inflation. (Photo provided by Molten, @Akihiro Yoshida)

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スポーツ用品や自動車部品、医療・福祉機器など広範囲な分野のゴム・樹脂製品のメーカー、モルテン(本社:広島市)は、組み立て式のサッカーボールでアジアの子供達の成長に貢献する事業に2021年から取り組んでいる。

 

わずか3種類の部品をブロックのように組み合わせて作るサッカーボール「MY FOOTBALL KIT」は、空気入れが不要で、子供が裸足でボールを蹴っても怪我することなく、サッカーが楽しめる。子供たちが自ら部品を組み合わせて球体を作ることで、空間認識能力を高める教育効果もあるとされる。

 

 

「サッカーができる環境を改善したい」

 

なぜ、空気不要の組み立て式サッカーボールなのかー。

 

アジアや途上国では、子供たちがパンクしたボールや、衣類などを丸めただけのボールでサッカーをする、恵まれない実態があることを知ったことがすべての始まりだった。

 

モルテンはバスケットボール、バレーボール、サッカーボール、ハンドボールの公式試合球に認定される日本のボールメーカー大手。サッカーボールは1973年よりFIFAから認定球に認められている実績がある。

 

サッカーのプロ選手を目指して大学までプレーをしていたモルテン社員の内田潤さんは、サッカーボールをアジアで拡販したいと最初は思っていたが、「自分はサッカーを通して夢を抱き、人として成長することが出来た。子どもたちがサッカーを通じて夢を抱き、成長するきっかけとなる教育とスポーツを届ける事が出来ないか」と考え方が変わった。「スポーツ用品で学校市場を顧客とするモルテンと教育の親和性、自社の優れた技術を活かして、子供たちのサッカーの環境改善と成長に貢献できる事業をやりたい」と思うようになったという。

 

「MY FOOTBALL KIT」発起人の内田潤さん(写真提供:モルテン)

 

妥協しない技術が結集

 

内田さんを中心にプロジェクトが始動し、「MY FOOTBALL KIT」という世界初の画期的なオリジナルサッカーボールが生まれた。

 

カッコイイデザイン、素材には再生ポリプロピレンを約70%使用した環境配慮、蹴った感触もサッカーボールそのものという、ボールメーカーならではの技術が結集されている。パーツごとに分解した状態で輸送するので、輸送コストも削減できる。パーツが破損した場合は、壊れたパーツのみを交換すれば、ボールを丸ごと廃棄しなくても済む経済性も学べる。

 

2023年には組み立て式サッカーゴール「GOAL KIT」も発売された。

 

 MY FOOTBALL KITを組み立てる子供たち(写真提供:モルテン)

 

経営資源を活かす

 

「MY FOOTBALL KIT」は、企業や団体がモルテンから購入し、子供たちに贈ることで、国連のSDGsが掲げる目標の「質の高い教育をみんなに」「つくる責任・つかう責任」に貢献するプログラムだ。売り上げの一部は、子供たちがスポーツを通じた成長に貢献できる資金として活用される。すでに多くの団体や企業とのコラボでアジア地域へのボールやゴールの提供が進んでいる。

 

ボールの生産工場をアジアの発展途上国に作ることに繋がれば、現地の雇用創出もできる。モルテンは「社内および外部パートナーと組んで、こうした社会問題を解決する製品・サービスの創出に取り組んでいる」という。

 

筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)

 

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